症候群。2






              痛い
          

          鈍い痛みが広がって
          じわじわ、じわじわ
            浸食されてく

          
              痛い


             立てない
             たすけて

         縋るようにアウルを見上げる



           『動けねぇの?』   
           





「…動けないの?」

縋るように見上げると、シンがしゃんできた。
膝を立てて。
首をかしげて。
子供にたずねるみたいに。

「肩、貸そうか?」

温かい笑顔を浮かべて。
優しいシン。

「血が出てるみたいだし、応急処置した方が良いかも」
「…血、出てる?」
「額、ぱっくり割れてるけど。気づかない?」

血。
額から。
どんどん流れてくる。




            
        
 額から何か赤いのが流れてきて
             垂れてきて
          視界が真っ赤になって


           じわじわ、じわじわ


        生ぬるい液体が頬を伝って服に落ちた
          ポツンと落ちる綺麗な赤


             ポツポツ


          出来た模様はまばらな水玉
           アウルの顔には苦笑い



         『あーあ。制服汚しちゃって』




「あーあ。制服汚しちゃったね」

シンの顔には苦笑い。
目線の先には、私の肩に広がる赤い染み。

困ったな、って呟きながら。
ポケットから携帯を取り出した。
子供みたいなピンクのデザインは、妹さんの携帯と似ている。

耳に届く、電話越しに交わされる短い会話。
シンの親指が電源のボタンを押す。

「ルナ、換えの制服取ってきてくれるって」

パチン、と携帯を閉じる軽やかな音。
巫山戯るみたいに、肩をすくめる。

「ルナが、『制服汚す悪いコにはオシオキ』だってさ」