症候群。1





銀色のアルミニウムの廊下を走ってたら
後ろから足音が迫ってくるの



              『ステラ』
 


         アウルが追ってきたんだ
        私が、何か悪い事をしたから
            怒りにきたんだ
            殴りにきたんだ



           『待てよ、ステラ』



          私は思い切り走って
             靴が脱げて
              転んで
          酸素が足りなくなって
             苦しくて
        ちょっとだけ速度を緩めたら 



            『捕まえた』



             ビュンって
         耳元で風を切る音がした

         何か堅い物が頭に当たる
           ゴン、って鈍い音
           頭に熱が走って
          痛い、って私が言うと



        『ばーか。それ位避けろよ』



           アウルは笑うの
        鉄の棒を振り上げる手を止めて
           笑ってくれるの
          しょうがないなって
          私を殴った棒を捨てて
        大きな手を差し出してくれるの
     血が付いた真っ赤な手で助けてくれるの



          『大丈夫か?ステラ』





「大丈夫か?ステラ」
シンの声がする。
後ろから追いかけてきたのはシン。
そしてここはミネルバ。
「…シン」
目の前に、シンの大きな手。
真っ白な綺麗な手。
赤くない手。
「いきなり走り出したかと思ったら…壁にぶつかるんだもん。驚いたよ」
シンの赤い目が、困ったみたいに細まってる。
心配、してくれてるのかな。
ちょっとだけ、嬉しい。
有り難う、って手を取ろうとしたら、
「…痛い…」
ぶつけた頭が、痛かった。