その瞬間。
キラの目の前で、レクイエムは崩れ落ちた。
キラは目を覆った。
自分には何ができたのだろう。
結局、再び力を手にとって、戦って、自分に何が変えられたのだろうか、と。
キラがその想いの渦に飲み込まれそうになったとき、誰かの声が心に響いた。
「キラ」と。
ただ一言、自分の名のみを読んだその声は、飲み込まれそうなキラの意識を呼び戻す。
そうして、キラは想った。
彼女のことを。
必ず自分のことを待っていてくれるだろう、愛おしい彼女のことを……。
安寧の園
レクイエムの破片が浮かぶそらを、キラはまっすぐに飛んでいた。
心の中にあるのは、ラクスの元へ帰らなければ、という想いのみ。だが、それはキラにとって何よりも優先しなければならないものだった。
(きっと……ラクスは僕がそばに行くまで、ラクスになれないから)
不安げなラクスの顔を思い浮かべると、自然とキラの心も急く。さらにストライクフリーダムのスピードを上げると、エターナルへ。
議長のしようとしていた事をとめ、レクイエムも大破させたあと、キラが一番に気にしたのはラクスのことだった。
きっと不安に思っていただろうラクスのそばに、すぐにでも飛んで行きたかった。
だって、キラには確かに聞こえたのだから。
戦いが終わったあと、「キラ」と呼びかけるラクスの声が。
耳に聞こえるわけではないその声は、聞こえる、というには語弊があるかもしれないが、キラの心にはっきりと届いたのだ。
そして、また届く声。
キラ……。
(ほらまた。)
本当にラクスが呼びかけているのかは、わからない。
だが、きっとそうに違いない、とキラは思った。
なにかが、自分たちをつないでくれているに違いない、と。
そう思い、苦笑すると、目の前にはもう、エターナルの姿があった。
通信回線を開くと、思ったとおりのラクスの不安そうな顔が、画面に映る。
「キラ!!」
呼びかけてくる声は、自分を呼び覚ましてくれた声と同じもの。
ああ、また心配をかけてしまったな、とキラはラクスに向かって苦笑いした。
そうして、キラはゆっくりと口を動かす。
「ラクス」
そしてもう一言。
「ありがとう」
ラクスの瞳を見つめて微笑むと、ラクスもやっとぎこちない笑みを顔に浮かべた。
☆ ☆ ☆
あとがき(?)
うわあ。妄想あのあと。(最終回)
そこはかとなくシリアスっぽく。なんというか、不満たらたらで書き始めたらそのときの気分でこんなものに。
さっさと、通信を開けばいいとか、そういう突っ込みはなしな方向で(笑) いや、言い訳してますが(ラクスバージョンで)
ごめんなさい……時間、本当にかけてないので……。そのときの衝動のみで書きました。
こんなのでも楽しんでいただけたら幸いです。