キラ……。
そう心の中でつぶやく。
無事だとは信じている。現に、ストライクフリーダムの姿を目に捕らえることはできた。
だが、不安になる心は止められるものでもなく、祈ることしかできない自分に歯がゆさを感じていた。
そうして、なんども、なんども。
彼の名を呼んだのだ、心の中で。
安寧の園
エターナルの艦内。
ラクスは艦長席に座りながら、目を瞑り、息を吐いた。
周りからはレクイエムの爆破を喜びあうクルーたちの声が聞こえてくる。ラクス自身もそのことについては喜ばしく思っていたし、その喜びに体を満たしたかった。
だが、彼のいない状態では、ラクスには無理な話だった。キラがいなければ悲しみも、喜びでさえも素直に表すことができないのだ。
甘えすぎなのかもしれないが仕方がない。今も、ラクスはその感情を冷静な顔で押し隠しながら顔を伏せていたのだから。
目を閉じれば、キラのもとへ心を飛ばせる気がした。
そうやって閉じていた目を開けると、目の前に広がるのは広大な宇宙。
(もう少し……)
キラが近付いてきているような気がした。
何がそう感じさせるのかはわからなかったが、それはラクスの中で確かなことだったから、その感覚を信じることにする。
そして。
多くの突然のことがあったせいか、ざわめくエターナルの中に、通信を知らせる音が響いた。
レクイエム爆発の影響で上手く働いてくれなかった通信回線が開かれたのだ。
それはストライクフリーダムからで、画面に映っているのはもちろんキラだった。
「キラ!!」
思わず叫ぶと、画面の中のキラはなぜか苦笑いする。
自分があまりにも必死な顔をしていたからだろうか、とキョトン、としていると、キラは「ラクス」と呼びかけた。
キラはラクスの目をじっと見つめると、ラクスの思いもよらないことを口にする。
「ありがとう」
何のことかわからなかったが、そう言ったキラの笑顔に、ラクスの心の底からの嬉しさがあふれ出て。
ぎこちないながらも、ラクスの顔には自然と笑みが浮かんでいた。
「キラ……!!」
帰艦したストライクフリーダムから降りてくるキラのところまでとぶと、ラクスはじっとキラの瞳を見つめた。
無事でよかった、という想いが胸を満たすと、じんわりと目が熱くなってくる。
泣いてはいけない。
そう思うものの、一度生まれた熱さは簡単には消えてくれなくて。
空中にふわり、と浮かんでいくキラキラとした水のつぶも増えていくばかりだった。
嬉しいのに、止まらない衝動。
お帰りなさい。
そう笑顔で言いたいのに……。
無理に笑おうとするが、上手くいかないまま、ラクスは声を発した。
「キ、ラ……っ」
「ラクス!」
キラのその声を聞いたかと思うと、ラクスはもう、キラの腕の中だった。
突然のことに驚いたが、さっきまでの衝動が驚くほどの速さで収まっていくのをラクスは感じていた。
周りの音も聞こえないくらいにラクスの体を抱きしめるキラの腕。
ぎゅっと抱きつくと、暖かな感触。
抱きしめてくれる手も優しくて、ラクスはくすくすと笑った。
もう、涙は出てこない。
今なら、言いたかった言葉を伝えることができる。そう思った。
「キラ……」
少しだけ体を離して、キラの顔を見上げる。
ラクスの、桃色のきれいな髪が舞った。
「おかえりなさい」
その一言を笑顔で。
他の誰にも見せないような笑顔で伝えた。
そうして、またキラの胸に抱きつく。やはり、じんわりと感じられる温かさが嬉しかった。
「ただいま」
キラが耳元に囁くと、ラクスはまたくすくすと笑った。
また、穏やかな時間がはじまればいいのに……。
二人で、そう思いあいながら……。
☆ ☆ ☆
あとがき(?)
本当に時間をかけていないものその2。
セリフ少なくってごめんなさい。
そして、色々矛盾点があってすみません……。
……衝動的なものですから……。ですが、何か発見があったら言ってください〜。
直しますから……(自信ないので……)