見守る瞳





空は朱を帯び、海にはゆれて映る陽。
日の入りの時間もだんだんと早くなってきた。
季節は秋。
風がそよそよと草木を揺らし、音を立てる。


ラクスたちの住む家でも、もう暗くなるからだろうか。遊び終えた子供たちが続々と帰ってきていた。
そして、もうそろそろ夕飯時、という頃である。
キラがいないことに気づいたのだ。

そういえば、とラクスは思い出す。キラは昨日の夜も遅くまでパソコンの前に座っていたな、と。
さらにいえば、ラクス自身も途中で寝てしまったために、キラがいつ眠りについたのかは知らないのだ、ということも思い出した。

「キラを、探してきますわね。夕食は先に食べておいて下さい。遅くなるかもしれませんから」
もしかしたら、部屋で寝ているのかもしれない。寝ているのなら、ゆっくり寝かせてあげたい。
そう思い、ラクスは寝室へと向かった。


「キラ……? キラ……?」
もうすっかり暗くなり、明かりが差し込まなくなってしまった部屋で、小さく声をかける。
もし眠っていたら、起こしてしまわないように。

だが、どうやらその心配も意味を成さず、キラの姿は寝室の中にはなかった。
「どこへ行かれたのでしょうか……」
ため息とともに、つぶやいたその時。
窓の外から、トリィ、という彼のロボット鳥の声が聞こえ、ラクスはもしかして、と思い当たった。
キラは外にいるのかもしれない、と。
海を見るのが好きな彼だから、うとうとと眠ってしまったのかもしれない、と。

ラクスは、苦笑すると、寝室にあった薄手の毛布を手に取り、彼がいるだろう場所へと向かった。



   *   *   *



そこには、ラクスの予想通り、キラの姿があった。
気持ちよさそうに眠っているが、キラは秋の風にさらされて、少し寒そうに見える。
持ってきた毛布をキラにかけると、トリィ、という泣き声がまた聞こえて、ラクスは微笑んだ。
「教えてくださって、ありがとうございます、トリィ」
応えるように、トリィ、とまた鳴いて。
トリィは、キラの眠る椅子にとまると、首をかしげた。
ラクスは柔らかに笑うと、キラを見つめる。
そんな穏やかな光景。

それは、キラが目を覚ますまでずっと……。