約束の未来








「皆さん、楽しそうですわね」

「うん、みんな元気だよね」



ラクスの言葉にキラもうなずき、瞳を合わせる。

浜辺での風は優しく、ぽかぽかと肌に感じる陽射しが暖かい。

キラとラクスは、子供たちと一緒に散歩に来たのだ。

だが、子供たちは早速何か遊びを発見したようで、それに夢中だ。



「いいね、こういうの……」

「そうですわね。……しあわせ、というのでしょうか?温かくなりますわね」



平和な日々。

それは自分たちがずっと求めて続けて来たもので……



嬉しさで胸がいっぱいになると同時に、

壊れてしまうことへの大きな恐怖もともにあるものだった。



「ラクスおねえちゃん!!」

ふと見ると、子供たちの中から一人、男の子が駆けてくるのが見える。

その瞳は喜びに輝き、期待にあふれている。



「まあ、どうしましたの?」

ラクスが優しく問うと、その子は手に持っていたものを「はい」といって差し出した。



「これ、ラクスおねえちゃんにあげる!!上手にできてるでしょ?」

「ありがとう……」

そういってラクスは、手渡されたものを覗き込む。

「指輪だよ!!」

男の子はそう言って、にっこりと笑った。



ラクスも、「ありがとう。可愛らしく出来ていますわね」と、笑みを向けると、

男の子はまた、みんなの所へ駆けていった。











男の子に向かって手を振るラクスに、キラは言いようのない思いを抱いていた。

自分だって、まだ指輪などを渡せていないのだ。

たとえ小さな男の子が、何の気なしに渡したものであったとしても、見逃せるものではなくて。

不思議な気持ちを感じていた。



「……ラ、キラ…?」

「あっ、えっと……どうしたの?ラクス」

二回目でやっと反応を示したキラに、ラクスは少し、眉をひそめた。



「どうしたの?はこっちのせりふですわ。

さっきからボーっとしていますが、どうかなさいましたか?」



「ううん、なんでもない……なんでもないんだけど……。

あ、そうだ、ラクス。それ、つけないの?」



「これ……ですか?」



手のひらに乗っている小さな花で出来た指輪を、キラに見せるようにしてたずねると、

キラはコクリ、とうなずいた。



「つけたいのはやまやまなのですが……指には入りませんし。

……それに、指輪というものは……その……

やはり、女の子にとっては大切なものですもの……」



ラクスの少女らしい答え。それも、ほほを染めながらの言葉で。

キラは、ドキッとした。



そして、それを抑えるようにして、声を発する。

「えーっと……それじゃあ……」

「はい?」

「ラクス……あの……」

キラの顔がだんだんと赤らんでくる。



そうしてキラは、ゆっくりと、ラクスの手をとった。

強すぎないように、それでもぎゅっと握り締める。



「僕が、ラクスに、その……指輪をあげたら……」

はめてくれる?



そう訊こうとしたキラの言葉は、ラクスのしっかりとした言葉にかき消された。



「もちろん、はめますわ。……キラがくれるものでしたら絶対に、……左手の薬指に……」



もちろんラクスもキラも、顔は真っ赤で。

それでも、キラとラクスは手をずっとつないだままで。



そして、笑いあう。



未来の自分も、きっとこの人のそばにあると信じて―――。




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