妄想話1(スペエディ2、前編画像から)
「キラ……?」
「何ーラクス……」
パソコンの前に座るキラ。自分を呼ぶラクスの声に、振り向いたキラは、目を見開いた。
キラの視線の先には、ラクスが悲しそうな顔をして立っていて。
「どうかしたの……?!」
キラは思いきりうろたえた。思わず立ち上がる。がたり、とキラの座っていた椅子が大きく音を立てた。
「キラ……! ピンクちゃんの様子がおかしいのです!」
「え……?」
「どうしましょう……」
瞳に涙まで浮かべて言いつのるラクス。
とたんにキラの心臓は大きく鳴る。
涙で潤んだ瞳に、上目遣い。
(……かわ、いい……)
つい、キラの思考はそんな方向に向いてしまって。顔を少し赤らめた。
けれど、すぐに持ち直すと、ラクスに問いかける。
「えーっと……ピンクちゃんって、そのハロのことだよね……」
キラはラクスの胸に抱かれているハロを見る。ハロはいつものように「テヤンデーィ」などという意味の分からない言葉を発していた。
はっきり言って、様子がおかしいとは思えない。
キラは首をかしげた。
けれど、ラクスから返ってきたのは「はい」という言葉。しかもそれは涙混じりで。
「なんだか、飛び跳ね方がおかしい気がしますの……元気がない、とでも言えばいいのでしょうか……」
キラには良くは分からないのだが、どうやら「元気がない」らしい。もともとハロはラクスのものであるし、ラクスだけに分かることもあるのだろう。
心底心配している、といった様子のラクスに、キラはそう結論づけた。
そもそも、キラはラクスの涙に弱い。
というか、ラクスのためならば何でもしたいと思う。ハロを作ったアスランに文句は言いたくなるものの、ラクスのためならば、と。
それならば、最初からキラが言う言葉は決まっていた。
「じゃあ、僕がメンテナンスしようか」と。
多少苦手ではあるが、どうにかなるだろう。キラはそう思ったのだった。
* * *
カチャカチャ。
部屋の中に、音が響く。
キラとラクスは、先ほどから終始無言だった。
椅子に座り、向かい合う二人の視線の先にあるのは、ピンクちゃんなるハロ。そのハロは今、電源を切られ、細かい機械の部品がたくさん詰まっている中身をさらしていた。
カチャカチャ……。
キラの手元が動くと同時に、響く音。
ふと、その音が止まる。
「できましたの……?」
ラクスの心配そうな声。
「うん……多分、大丈夫だと思う……」
キラはそう返して、顔を上げた。
と。
「本当ですか?! よかったですわ……」
「……!」
思いがけず、近くにあったラクスの顔に、一瞬顔を赤らめた。しかも、ラクスは安心したのだろう。満面の笑みを浮かべていて。
さらに動揺するキラ。
おもわず、少し目をそらした。このままでは、まずい。そう思ったからだった。
「キラ……?」
けれど、ラクスはそんなキラの内心も知らず、きょとん、としている。
それどころか、顔をのぞき込もうとして……。
「きゃ……!!」
ラクスの悲鳴が室内に響いた。ラクスの体が前につんのめったのだ。
「ラクス……!」
キラの体が、ラクスを支えるために、反射的に動く。
次の瞬間にはラクスは、キラの腕の中にいた。
沈黙が、流れる。
はぁ。キラの口から、小さなため息がはき出された。
「キラ……すみません……」
それに反応するかのように、ラクスの体が一瞬揺れる。ラクスの顔は、今や真っ赤に染まっていた。
「良いよ……それよりラクス、大丈夫だった?」
「はい……」
「それなら良かった……」
キラはもう一度ため息をついた。
ラクスにも分かっていた。これは安心のため息であると。そしてさっきのものも。
「ありがとうございます……」
だから、と思いラクスは感謝の思いを告げる。その様子がかわいくて、キラはくすくすと笑った。
「本当にもう……危なっかしいなぁ……」
そして、自分が言われ慣れている言葉をラクスに向けた。
ラクスはしっかりしている。けれど、どこかこういうところで抜けているように感じるから。
「もう……そんなことは……」
「ないって言える?」
くすくす。
キラがラクスとの間に少し距離をつくって、ラクスの顔を見る。
「そんなことは……」
ラクスがもう一度そこまで言ったとき、にこり、とキラが笑いかける。ラクスの言葉はそこで詰まり。
「……やっぱり、あるかもしれませんわ……」
少しすねたように、悔しそうに呟いた。
そして、キラの胸の中へとまた戻る。
キラもぎゅう、と抱きしめて。
ラクスも抱きしめ返して。
こんななんでもない時間が、とても幸せ。
二人は、そう思った。
そんなひととき。
☆後書き☆
一体何が書きたかったんだろう。
テスト期間中に、スペエディの2があるとか……ひどすぎですよね。そんなわけで前編見られなかったところに、頂いたキララクシーン画像。
それから妄想がふくらみました。
その妄想を糧として、どうにかテストとレポートは終わらせました。
ありがとうございます。
キララク万歳!