「おとうさま」
「うん?なんだいラクス?」
「おとうさま、おかあさまはどこへおいきになったの?」
「......う〜ん、難しい質問だなぁ」
「むずかしいのですか?」
「う〜ん、そうだねとても難しい...だけど」
「だけど?」
「ラクスはその答えをもう知っているのだろう?」
「え?」
「母さんはいつだってお前を見守っているのだから」
「ほんとうに?」
「ああ、本当だとも」
「じゃあどこにおいでなの?」
「母さんはね、宇宙(そら)へと還っていったのだよ」
「そら?そらってここからみえるあのおそらのこと?」
「いや、もっと遠いけどとても近い所だよ」
「......よくわかりません」
「ふふふ...良いんだよ今は分からなくてもいつかきっと分かるような日が来るのだから」
「ほんとうですか?」
「ああ、本当だとも」
星空の彼方
「んんぅ」
「あ、起きた?」
ラクスは目に入り込んで来た柔らかい陽射しにその瞳を細めるようにして開くと
そこにはいつもと変わらない優しい笑みを浮かべたキラがそこに居て何か楽しそうにラクスの長い髪を梳いていた
そんな光景を目にしながらもラクスはその美しい空色の瞳をまだ眠たそうに擦る
その瞳にはそして顔には寝惚けている事を象徴するような節が幾つも見受けられキラは優しくも可笑しそうに笑った
笑われたラクスは何の事だか良く分からないように目を瞬いていたがそこでそうしてからようやく意識がはっきりしてきたようだった
「...キラ」
「うん?」
まだ眠たそうな声でラクスはキラを呼ぶとキラもキラでのんびりとだがとても優しく微笑んで返した
そしてキラはそう返してやりつつも尚楽しそうにラクスの髪を梳きながら言った
「何?どうかした?」
ラクスはキラにそう言われてから何処かはにかむように微笑むと顔を背けた...がすぐに顔を真っ赤にして動きを止めた
何故なら顔を背けたその先にあったのが黒くそして心地よい柔らかさを持ったものだっただからだ
ラクスはそこでまだ少し寝惚けていた意識がしっかりと覚醒したのが分かった
それと同時にラクスはその黒く柔らかい物がキラの太腿であることに気付きそしてまた自分が膝枕をされていると言う事にも気付いた
「き...きき、キラ?」
それが分かるとラクスは恥ずかしさから一気に言葉がどもってしまいキラの名を呼ぶ事さえままならなかった
そんな自分の醜態をキラにしっかり見られているという羞恥心も絡まりラクスは顔はおろか耳まで真っ赤に染めると呟く様に
「...いつから、ですか?」というと
「うん?」
と言ってキラがラクスの顔を真上から覗き込んできたのを見てまたもラクスは顔を背けて言った
「いつからわたくしは眠ってしまっていたのですか?」
すると今度はキラもきちんと聞き取れたようで「ああ」と楽しそうに相槌を打つと指を折って数え始めた
その指がどんどん折られていくのを見たラクスは顔を少し蒼くすると
「そんなにも?」と心底心配そうに呟いた
すると指を折ることに気が行っていたキラは急にきょとんとするとそれからすぐに可笑しそうに笑い始めた
笑われたことにそれほどまで寝ていたのだろうかと心配になったラクスはキラを促すとキラは悪戯っ子の様に笑って
「ラクスはそんなに寝てないよ、ほんの2、30分位じゃないかな」
「だよね」とキラは後ろを振り向くようにして言うと控えていたメイド頭であるアリスがくすくす笑いながら頷いた
その光景にラクスはほっと胸を撫で下ろしたが「あら?」と口に出すと
「では何故キラはお笑いになったのですか?」と訊くとキラは口だけ笑うと
「まさか騙されるとは思わなかったから」と言うと怒って起き上がってすぐに襲ってきたラクスの拳を避ける様にして身体を抱きとめた
簡単に自分の反撃をかわされた上に優しくその身体を抱きとめられてしまったラクスはすこしだけ頬を膨らませた
だが「怒らないで」という言葉と共に頬に降ってきたキスがラクスの怒りを優しく受け止めると
次々と降ってくるキスにラクスは幸せそうに瞳を細めて自分の身体をキラに向かい合う体勢に変えるとキラの首に腕をまわした
キラはそのラクスの行動に別段驚きもしないで受け入れると
「ラクス」
と、いつものように優しくそれでいて強いキラの声がラクスの名を呼んだ
たったそれだけのことにラクスは脳が蕩けてしまう様な快感を覚えて無意識にキラを抱く腕に力を加えた
するとキラはそれこそいつもの事のようにその大きくなっていく手でラクスの頭を髪を梳くようにして撫でて
「...綺麗な桃色だよねラクスの髪の色ってさ」と言うと
「...歯に浮いたようなセリフを良く言えますわね」とラクスが顔を真っ赤にしながら返す
するとキラは恥ずかしそうに苦笑して「やっぱり?」と言うと続けて「言ってて恥ずかしかったもん」と言って笑った
そのキラの言葉にラクスは「自覚はお有りでしたか」と確かめるように問うとキラは笑って「一応はね」と返した
しばらくしてから「...ところでさ」とキラが言うとラクスは優しく笑って
「はい?」と答えて優しく微笑みながらキラを見るとそれにキラもまた優しく微笑み返して問う
「...ところでさどんな夢を見てたの?妙に楽しそうだったけど」
その問いにラクスはほんの暫く目を丸くしていたがすぐに「ああ」と呟いて恥ずかしそうに笑うと言う
「幼い頃の夢です」
「へえ、どんなの?」
「母が亡くなって間もない頃に父とした覚えのある会話の夢で...
ああ、キラそんな顔をなさらないで下さいな別に悲しい夢ではなかったのですから」
「え?そうなの?」
「はい」とラクスは答えてすぐに「続きを話しても宜しいですか?」と促すとキラは黙って頷いた
「あれはわたくしがまだ5歳でした時でしょうか...
当時のわたくしは母を失った事が分からなくて父に質問をしましたの」
「どんな?」とキラは少し居心地悪そうに言うとラクスは優しく微笑んで
「『かあさまはどこにおいきになったの』って言う質問ですわ」
その言葉にキラは緊張を解いたかのように微笑んで
「なんだラクスも普通の子なんだ」と言うとラクスは少し頬を膨らませて「どんな子供だと思っていたのですか?」と問うた
それにはキラは困ったように笑って誤魔化すと「そしたらシーゲルさんはなんて言ったの?」と逆に問うた
ラクスはキラに自分の問いをうやむやにされたことに不平を口にしながらもキラの問いに答えた
「『宇宙(そら)に行ったんだよ』ってそれから『遠くて近い所』とも言っていましたわね」
「何それどういう事?」と問いの答えにキラは驚いたように言うとラクスもまた困ったように笑ってから
「父は『大きくなったなら分かる』とは言っていましたけれど...」と言うとキラは
「そっか...」と呟いてからラクスを見て「でも分かるような気がするな」と優しく微笑みながら言った
その言葉にラクスは驚いたように目を丸くすると「キラもですか?」と言った
そんなラクスの言葉にキラは驚きもせずに「やっぱりラクスも分かってたんだ?」と口にした
ラクスはキラの態度に驚きながらもキラの言葉に笑って「わたくしも大人になりましたから」と返すとキラの唇に自分のそれを重ねた
キラはそんなラクスの急な行動に真っ赤になりながらラクスを見つめ返すとラクスは優しくはにかむ様に笑って
「わたくしとあなたもそんな関係になりましょうね」
と言うとキラはその言葉を理解するのに数秒要したようだったが理解するに至ると
「うん、そうだね
いつまでもそんな関係でいようね」
と口にして今度は自分からラクスの唇に深く長く蕩ける様な甘いキスをした
――後ろで控えていたアリスが顔を真っ赤にして所在無さそうにしていたのは言うまでも無い事である
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遥 儚麻様から頂きました、素敵キララク。
フリーとはもれなく強奪・展示・見せびらかす為に有る
そんな言葉に従いまして、フリーとして展示なさっている物をUPさせて頂きました。
有り難う御座います!