学園での一ページ





スザクは、少し変わった。
それは外観的な物ではなく、心が。
けれど、それでも、変わらない。一番、大事なところだけは。

「友達なんだ」

だから。
そう、告げた。
転校してきてすぐには、みんなに告げることのできなかった言葉。それは彼が『イレブン』だったからこそ。

けれど、ほんの少しの間に彼は、自身の位置を確立させてしまった。それも、彼だからこそなのだろう。
まだ、いじめがなくなったわけではないようだが、それもそのうちに解決するだろう。

授業中。にもかかわらず、ぼぅ、と彼をみながら思う。
それは、懐かしさからか、それとも、彼の置かれた状況を憂いてなのか。
自分でもよく分からないが、彼をみていると胸が騒いだ。
つい、ルルーシュは考えに没頭してしまう。

「ルル、ご飯食べよう?」

シャーリーの声に我に返る。気付けばもう、午前の授業は終わっていた。自分らしからぬことにルルーシュは心の中で苦笑した。
椅子に座ったまま、ああ、と短く答え、ルルーシュはスザクの席に目をやる。
いない。

「スザクは?」
「んー、なんか、少し前に出てっちゃったみたいだけど……」

思わずシャーリーに訊くと、返ってきた返答は、小さな心配を催させるもので。
探しに行こうかと、席を立った瞬間。ガラリ、と音をたてて、教室に入ってきたのはその彼だった。
ルルーシュがスザクを凝視していることに気付いたのか、シャーリーが不思議そうな声を出す。

「ルル? どうかした、スザク君、今返ってきたみたいだけど……」
「いや、なんでもない」
「そう……?」

シャーリーが、納得した。
と、次の瞬間、彼女は「あ」と声を発したかと思うと、スザクに駆け寄った。

「スザク君も、一緒に食べない?」

その言葉にルルーシュは目を見開いた。
別にそれが嫌なわけではない。むしろ、嬉しいくらいだった。気になってはいたが、自分らしくなく「誘う」などということもできずにいたのだ。スザクはいつも一人で昼食を取っていたように見えたから。
スザクも唐突なその言葉に驚いたようで、眼をぱちぱちと瞬かせていたが、すぐに頷いた。
了承の証だ。
そして、スザクの眼がルルーシュに向けられ、微笑む。
心配してくれてありがとう。
そんな声が聞こえてくるような。
なぜか、ルルーシュはそれに恥ずかしさを覚えた。
シャーリーとスザクは二言三言話して、ルルーシュのいる場所へとやって来る。

「ルルも、良いよね?」
「ああ」

先ほどと同じ言葉を返す。
けれど、発しているルルーシュ自身には、先ほどとは違う、響きに聞こえて。嬉しい、という思いが、にじんでいるような気がして。
苦虫をかみつぶしたような表情を一瞬してしまった。

すぐに見上げてみると、シャーリーは頭に疑問符を浮かべている。けれど、スザクはただ、嬉しそうにしていて。
ルルーシュは内心ため息を吐きながら、隣の席の椅子を引いた。

「スザク」
「あ、うん」

始終にこにことしているスザクと、やはり、どこか表情がおかしなルルーシュ。
シャーリーはそんな二人を見比べながら、もぐもぐと、口を動かすのだった。


おしまい





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ルルーシュのことならば、すぐに分かってしまうスザクと、分からないシャーリーの図。

とまどっているルルーシュはとてもかわいいと思います。
なんか抜けてていいなぁ……。

ていうか、ほんと別部屋にするほどのことじゃなくてすみません。