猫のきまぐれは。





「まったく、これだからブリタニア人は!」

つぶやきながら、カレンは廊下を歩いていた。もちろん小走りなんてことはしない。あくまでゆっくりと。優等生らしく、病弱な少女らしく。
けれど、ざわざわと如何ともしがたい思いが、胸をかき乱す。先ほどのことが、脳裏から離れない。
きっと、あの娘、シャーリーはルルーシュのことが好きなのだろう。それはなんとなくわかる。わかる、が、こちらを巻き込まないで欲しい、というのがカレンの心底からの願いだった。自分が、彼を好きになることなど無いのだから。

「……もう!」

今度は少し大きな声で。
もちろん、周りに誰もいないのは確認済みだ。もう、カレンにとっては確認しながら歩くのが癖になっているのだから。
行き場のない思いを少々の怒りへと変換しながら、カレンは拳を握りしめた。
本当に、ブリタニア人は、なんてのんきなのだろう。
そう、思った瞬間だった。

にゃん。

茂みから、猫が飛び出した。黒い、猫。
胸へと飛び込んできた猫を、カレンはとっさに受け止めた。

「っ! ……なんなの……?」

思わず呟くと、黒猫はまた鳴いた。
にゃーん、と。

すり寄ってくる猫を、カレンはとりあえず抱きかかえた。
かわいい、と一瞬思ってしまって、笑みをこぼしている自身に気付いて、カレンは苦笑をこぼした。
ふわふわとした毛並みの良い毛。頭を撫でたり、のどをくすぐったり。

にゃ!

猫が突然、カレンの手をひっかく。

「……いた」

思わず、顔をしかめる。じわり、と少しにじんだ血が、痛々しく見えた。
けれど、そうかと思えば、次の瞬間にはまたおとなしくなっていて。
なんて気まぐれなのだろう。
そう思うと同時に、どうしてかぼんやりと脳裏に浮かんだ影があって。
カレンはそれを振り払うかのように、頭を振った。そうして、また、猫をなで始める。

しばらくそうしていて気付いた。
(そういえば、よく生徒会にいる……猫? もしかして?)
それならば、生徒会の部屋へと連れていった方が良いだろう。もしかして誰かが探しているかもしれない。
そう思い、カレンは生徒会の部屋へと足を向けた。





撫でながら、ゆっくりと、カレンは歩いていた。

「もう少しで着くわよ」

話し掛けて、生徒会館内に入り、カレンはあ、という小さな叫びと共に足を止めた。
そこにいたのはスザク。二階に上がろうとしていたらしい彼は、カレンに気付いたのか振り返り、カレンの腕の中でおとなしくしている猫を見つめた。

「? ?」

わけの分からないカレンをよそに、スザクは傍へと近づいてきていて。

「やっぱり、僕だけか……片思いは」

どこか気落ちした声が、耳に届いて、カレンはきょとん、と首を傾げた。スザクはといえば、猫に手を伸ばして、威嚇されている。

「あら……どうしたのかしら?」

カレンの口から零れた言葉に、スザクは苦笑した。どことなく、少し悲しそうだ。

「えーっと……多分僕のせいというか……なんというか。僕は……猫、好きなんだけど、猫は僕のこと嫌いみたいでね……」
「そうなの……?」
「うん……君は両思いで良いなあ……」

本気で肩を落としたスザクを見て、カレンも何となく猫を見た。
黒い、猫。

「両思い……ねぇ……」

と、次の瞬間。
カレンは顔を赤く染めた。

つい先ほどのこと。
ぼんやりと思い出した影。黒を思わせる、そんな彼のことを思い出して。

「どうかした?」
「なんでもない!」

カレンはスザクを追い抜き、階段を駆け上がった。





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なんか……これ本当にルルカレかなぁ?
むしろ…………えーっと……まあ、いいか。
ただ、なんかいろいろと分からないところもあるので……何となくで書いている部分ありです。
この話、しかしかなり自己満足だなぁ……。
楽しみにしていて下さった方、いたらごめんなさい。
ルルーシュのルですら出てきてなくて……。