ルルカレ小話。3





「お前、暇か?」
不意に声をかけられて、カレンは手元の本から視線を上げた。隣に立つ男。

「ルルーシュ・ランペルージ……」

思わず、カレンの唇が動いた。フルネームで呼ばれたそれは、彼の、名だ。
ルルーシュの片眉が、不快だ、と言わんばかりに上げられる。
そんな彼の様子に、心中でため息を吐きながら、カレンはしおりをはさんで本を閉じた。ぱたん、と乾いた音が響く。

「何……?」
素っ気ない言葉で尋ね、いったい何のようなのだろう、とカレンは彼を見上げた。

「いや、チェスでもどうかと思ってな。お前はたいそう成績が良いじゃないか。暇ならしないか? チェスは……できるんだろう?」

その言葉に、カレンの眉はしかめられる。
確かに暇だが、彼の申し出通りにゲームをするのも癪に障った。

「まあ、ルールは知ってるわ。それに、今は読書くらいしかすることがないのも確かよ。……でも、だからといって、あなたとチェスをする必要なんてあるのかしら?」
「これは……手厳しいな」

静かな、けれど、どこかとげを含んだ言葉に、ルルーシュは苦笑した。
瞬間、カレンもはっとするが、もう出てしまった言葉は取り消せない。それに、彼には自分が猫をかぶっていることを気付かれている。
ばらすつもりもないようだし、それを一応だが、言葉として聞いてもいる。さして問題はないだろう。
考えが頭を駆けめぐり、どうにか平気な顔を繕う。

「大体、あなたチェスは強いのでしょう? 私などを相手にしても面白くないのではないかしら?」

そう告げて、また本を開こうと、しおりに手をかける。
――と。

「なんだ、負けるからか?」

からかうような声が飛んできて、カレンは手を止めた。
視線を彼の瞳に向けた。そこには、どこか楽しげな光が宿っている。
その瞳を見た瞬間、カレンは開きかけの本をまた閉じた。ぱたん。また音が響いて。
テーブルに置く。

「いいわ」

にこり、と勝ち気な笑みを浮かべた。
負けるつもりなど、なかった。





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なんかできちゃった中途半端SS。
ルルカレです。またか……もう、自分がやばいですね。
でもこのくらいのSSならばすぐにできちゃうので……これからも増えるのでしょうきっと。