質問。水槽の中の金魚は何で可愛いんでしょう?
君とペット。
蛍光灯のスイッチはオフ。
カーテンも締め切って、明かりといえばスタンドライトが付いているだけ。
部屋の隅には、テーブルに突っ伏しているステラ。
「何してんの?」
「お魚さん、見てる」
顔を向けないで言う。相変わらず暗い奴。
地面を一蹴り。
無重力で浮いた僕の体は、そのままステラの机に着地。
ステラの前には小さな水槽。
狭いガラス箱の中には、金魚が数匹。
壁にぶち当たっては戻ってくる金魚。
単純な往復運動を、ステラはうっとり見つめている。
「食用?」
ステラの首が横に振られる。
否定の意思表示。
「そんなの、見てて楽しい?」
こんどは縦に振られる。
肯定の意思表示。
「お魚さん、可愛い」
「可愛い、ねぇ…」
ぬめってる鱗。飛び出た目。恐ろしい位扁平な体。
魚類の特徴的な外見。
僕の美的感覚からは余裕でアウト。
生気のない目に睨まれて喜ぶステラはかなりのゲテモノ好き。
顔を近づけて、中をのぞき込む。
相変わらずクルクル回ってる金魚。
ちょん、と水槽をつつくとリクエストにお答えして近寄って来た。
わぁ、と声を上げるステラ。
何かに似てる。
回る金魚。
ツンツンと水槽をつつくステラ。
寄ってくる金魚。
笑うステラ。
ああ、
ステラに似てるんだ。
ご主人様の前で泳ぐ金魚。
飽きさせない様必死で泳いで。
手を出されたら寄っていいく。
需要が来たら必ず供給。
出された要望には即お答え。
だって、つまらなかったら外に出されて殺される。
ご主人様の愛情と自分の命は綺麗な等号式。
まるで僕とステラの関係。
「可愛い…」
うっとりとステラが呟く。
その慈愛の影に隠れた優越感。
弱いモノがより弱いモノを従える快感。
「そうかもね」
「アウルも、お魚さん、好き?」
「んー…」
ちょっと好きになったかも。
そういうと、ステラはにっこりと笑った。
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