メリーゴーランド










「白、似合うな」

海ではしゃぐステラに、スティングからの講評。つられて、僕もステラを見る。
スカートの裾をたくし上げてるのに、半分以上が濡れていた。

白いノースリブのワンピース。
白い腕。
白い脚。
白い下着。
清楚を絵に描いたようなステラ。

「純粋だからかな」
「単に白痴って言うんだよ。アレは」
「こら、アウル」

怒ったかと思うと、また目線を戻す。
細められた目。サングラス越しに見てもまだ眩しいらしい。

可哀想なスティング。
知らなかった?ステラ程白の似合わない奴は居ないよ。



「ステラ」

飾り気の無いパイプベッド。
隣には白いシーツに包まってるステラ。
顔まで全部隠しちゃって、見えるのは震える指だけ。

「ステラ」

僕がこんなに優しく呼んであげてるのに。ステラは黙りを決めこむ気らしい。
ムカついたから、シーツを剥ぎ取ってやった。
小さい悲鳴。
中から現れるステラは何も着ていない。
頬に張り付いた涙の跡。僕を映す怯えた瞳。
後ろへ行こうとする腕を捕まえた。

「何で逃げるのさ。寂しいじゃん」
「いや。アウル、怖い…」
「怖い?こんなにステラを綺麗にしてあげてるのに?」
「嫌ぁ!」

両手で頭を抱えてしゃがみこむステラ。
露わになった背中には、何本もの赤い線。
背中だけじゃ無い。
柔らかな腿にも。
細い手首にも。
ステラの白い肌に、痛みと一緒に添えられた鮮やかな彩り。

何て綺麗なんだろう。

「ステラにはやっぱり赤が似合うよ」

細い首に腕を回す。
ステラの体が強ばる。ステラの息が荒くなっているのがよく分かる。

怖いの?僕の可愛いステラちゃん?

なるべく優しく、ほだすように、後ろから抱いてやる。
背中に付けた傷を、指でそっとなぞってやる。
痛みに震えるステラの体。

「こっちの方が絶対綺麗」

そんなの嘘だけど。
耳元で言うと、ステラがくるりとコッチを向く。

「アウル…」

小さく僕の名前を呼ぶ。
怖々と、僕の肩に傷だらけの小さな手が回される。
見上げてくる瞳。
熱に浮かされた赤い瞳。

「ステラ…綺麗なの…?」

僕の口の端が小さく上がる。
綺麗綺麗って真っ赤な嘘を吐いて、ステラの細い腰を抱き寄せた。



ステラ程白が似合わない奴は居ないよ。
だって、こんなに汚れちゃってるもんね。
こんなに綺麗じゃないステラに、どうして白が似合うだろう?




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