赤。青。黄色。
アウルの部屋にはいっぱいのキャンディが有る。
パステル・キャンディーは悪魔の囁き
「ああ、食べていいよ」
ベットの上で寝転がったアウルが言う。
目線は手元の雑誌にロックオン。修正は漫画のコマが見える範囲で。
どんな話なんだろう。
アウルが時々笑ってるから、凄く面白いんだろうけど。
「勝手に取ってけば?」
指さした先はベッドサイド。
アウルの頭の横に散らかった本棚。
漫画に埋もれている、飴の入った瓶。
透明なガラスの中に詰まった沢山の色。
白。紫。橙。
(綺麗)
アウルの体に乗る。
手を伸ばす。
ぐえ、って下で低い呻き声。
降りろって怒るアウル。その頭の横にある瓶を取った。
薄茶のコルクを開ける。ポンって軽い音。
甘い砂糖の香り。
緑色。桃色。
綺麗なパステルの中から、一つだけ取り出した。
薄い水色。
摘んで口に入れる。
中で広がる苦い味。思ったより甘くない。
「それ、ミント?薬みたいな味するから嫌いなんだけど」
そういえば、薬の味に似てるかもしれない。甘いのに苦い。変な味。
「ステラってミント好きだっけ」
「…そうでもない」
「じゃあなんで?」
「アウルの目みたいだから…」
嫌そうなアウルの顔。
気持ち悪い、って。上に乗った侭の私を引きずり降ろした。
アウルは起き上がって、そして溜息。
「目なんて食って美味しいかよ…」
「だって、アウルの目の色、綺麗で美味しそう…」
不思議そうに細められた目。
光を反射する淡い水色。
優しい空の色。
意地悪なアウルの中で一つだけ優しい。
アウルはいつもの意地悪そうな笑顔を浮かべて。
「じゃ、オマエのは苺?」
私の頬に手を置いた。
ゆっくりと撫で上げる。近づいてくるアウルの顔。
「凄く甘いのかな」
嫌、って引いた私の顔を引き寄せて。
目を舐めた。
一回だけ、とても軽く。
柔らかい舌の感触。
近くに見える、赤い舌。
目のスカイブルー。
「…しょっぱい」
そう言ってアウルは嫌そうに顔を離した。
離れる瞬間に掛かったアウルの息。
コーラの甘い匂いがした。
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